テーラーメイドから発売のM5、M6ドライバーが、前作のM3、M4に引き続いて人気モデルとなっています。M5、M6に最大反発を与えるスピードインジェクションについて、その合理的で画期的な手法を解説します。
始まりは、発売前の意味深な動画
発売前のティザー動画の時点では、実は「スピードインジェクション」という言葉が出てきません。
最初に信号機のようなサークルが現れ、これが徐々に変わっていきます。信号機からSTARTボタンのようになります。そして回転し始め、タイヤになったかと思うと飛行機のジェットエンジンのようになりバーストします。最後は、赤いネジ状のものになり、画が退いていくドライバーのフェース面上に埋め込まれたものだった、という結末です。
これが何を意味するのか、最初はスクリューフェースといった呼び方も一部でありました。「調整機能がとうとうフェースにも搭載されるのか!」といった憶測も飛び出すほど謎めいた動画で、ゴルファーの興味を引くのにかなり成功したディザー広告です。
フェースに注射器が刺さる、インパクト大な動画
次に出てきた動画がこちらです。フェースに注射器が刺さるという見たこともないような動画で、「スピード・インジェクション」という言葉が使われています。
インジェクション(injection)は、「注入」という意味がありますので、直訳すれば「スピードを注入」となります。動画の視覚的な印象からも、何か反発を高めるようなエネルギーがフェースに注入されているように感じられますが、現実的には反発を高める仕上の素材が注入されているように捉えた方が殆どだと思います。
が、実態は逆だった!
「スピードインジェクション」とは、搭載されているテクノロジーではなく、新たな製造手法を意味します。この手法が極めて画期的です。
フェースの反発を高めるものではなく、下げるものだったという驚きの製造手法です。
スピードインジェクションが合理的で画期的な件
フェースの赤いネジはジェルを注入する穴だった
出典:https://www.taylormadegolf.jp/m5-m6-drivers-jp.html
まず、最初のティザー動画でも登場した赤いネジは、ゴルファーが操作する調整機能ではありません。メーカーが開発工程で使用するもので、フェース全面からジェルを注入するための穴です。
何故、ジェルを注入するのか?
ジェル?と聞くと、反発性能を高めるのではなく、下げるのでは?と思ったかたもいると思います。
そうです。正解です。
少し前にカムイのガス発泡ヘッドを思い浮かべた方もいるのではないでしょうか?ヘッド内部での打球音の反響が抑えられたり、打感が柔らかくなるといった効果があります。
M5、M6のスピード・インジェクションでは、レジンというジェル素材が注入されています。これは、反発を下げるために注入しています。
スピード・インジェクションは反発を下げるが、最大反発にしてくれる!?
スピード・インジェクションは、レジンを注入してフェースの反発を下げますが、結果的に最大反発を提供してくれます。
ゴルフクラブはヘッドサイズや反発係数といった仕様上の制限値がルールで定められています。ゴルフメーカー各社はこの限界値を超えないギリギリを狙って製造しています。実際、「ギリギリ」という表現を全面に打ち出しているメーカーがあります。
ところが、M5、M6では、限界値を超えないギリギリではなく、限界値を超えた、いわばルール違反のヘッドを製造しています。
そして、ルール違反のヘッドの反発性能を測定して、ジェルを注入してルール限界値まで下げる作業を行っています。これがスピード・インジェクションです。
これまではアタリ・ハズレがあった!?
スピード・インジェクションがすばらしいのは、やり方が合理的なところです。これまではギリギリを狙って製造しているため、製品によりばらつきがありました。メーカーとしては、合格となる反発性能の帯域(レンジ、レジンではないです)を設け、その中に収まったものが正式な製品となっていたと考えられます。
そして、中でも特に反発性能がギリギリに近い製品は、ツアープロなどのVIPに回されていたというのは、実しやかに囁かれている話です。
M5、M6ドライバーは全品が最大反発!
M5、M6ドライバーでは、製造されたヘッドにスピード・インジェクションという反発を調整して下げる作業がが行われることで、全てのヘッドが最大反発に仕上げられます。
これは、「アタリ・ハズレ」のないというより、全てのゴルファーが「アタリ」のクラブを手にできることを意味します。
規則ができると、ついつい破らない範囲で最大を目指してしまいますが、敢えてルールを破ってから違反の分だけ正すという、取り組み姿勢をがらりと変えた開発手法は、実に合理的ですし画期的です。開発費は嵩むようにも思われますが、不合格品が減るのではないかという期待と推測から、コストの問題ももしかしたらクリアされているのかもしれません。
今後、この開発手法が主流になってくると、市場でゴルフクラブを購入する一般ゴルファーとしては有難い限りです。
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