松山英樹が日本人初・アジア人初のメジャー優勝。
この快挙を成し遂げたマスターズで、静かに珍事件が発生していました。
通常では有り得ないという理由以外にも、同組だったゴルファーへの同情の念、モラル面での懸念など、様々な意見が上っています。
≫ 【キム・シウー】今度は10秒ルールで1打罰を受ける【カップの10秒ルール】
グリーンで3番ウッドを使う!しかもマスターズで
Si Woo Kim is attempting to be the first ever Masters champion to putt with a 3 wood because he snapped his putter in frustration. Si Woo is quickly becoming my favorite golfer.pic.twitter.com/uiVqUDCVft
— Andy Paden (@Andy_Paden) April 9, 2021
事が起きたのは2021年マスターズの2日目、15番ホールです。
グリーン上にいるのは韓国のキム・シウー。
パッティングのシーンですが、手にしているのはパターではなく3番ウッドです。この後で詳しく触れますが、とある事情からパターが使えなくなり、苦肉の策で3番ウッドを使っています。
キム・シウーのフェアウェイウッドはキャロウェイのMAVRIK SUBZEROですから、ライ角が55°、長さは43.25インチです。
ヘッドが明らかに違うことは勿論のこと、クラブ長さ、ライ角が全然違いますので、上体が随分と起きた状態でパッティングしていて、いかにもストロークしづらそうです。
3番ウッドをグリーンで使った理由は、パターを折ってしまったから
3番ウッドを使った理由は、何か戦略でも秘策でもなく、そうせざるを得ない状況に陥っていたためです。
▼パター破壊の瞬間の映像がこちらです
マスターズ2日目の15番ホール。前のホールで3パットしてしまい、自分のプレーに納得がいかずイライラが募っている様子。
そして遂に、パターをスキーのストックのように、地面へそのまま叩きつけます。その瞬間、シャフトが有り得ない方向に曲がっている様子が分かります。
叩きつけた後はシャフトが真っ直ぐなようにも見えますが、ひびが入ったか曲がったか、とにかくパターが破損とゴルフメディアでは報じられています。
同組の選手に同情の声も出ている
キム・シウーがこの後から3番ウッドでプレーせざるを得なくなったのは自業自得とは言え、権威あるマスターズでグリーン上で3番ウッドを持たれたら、同組の選手は緊張感がほどけてしまいそうです。
解説者の中嶋常幸も同組の人が可愛そうといった趣旨のコメントを怒りとともに述べられていました。
キム・シウーは過去にも感情的な振る舞いがあった
二度、池に入れてしまい、やはりいらいらが募ってしまったのでしょうか。
打ち直しの後、手にしていたウェッジを池に投げ捨ててしまっています。
道具を大事にするという点からも不適切な行為ですし、また、池はものを捨てて良い場所ではありませんので、残念なシーンです。
冷静に分析すると、3番ウッドは最適な選択!?
キム・シウーの行いについて、不適切であることは間違いありませんが、不幸にも途中でパターを破損してしまった場合、3番ウッドと言う選択が好ましいかを考えてみましょう。
まず、パターのスペックですが、キム・シウーが使っているモデルは、オデッセイのトゥーロン マディソンです。
スペックは、ロフト角3°、ライ角70°、長さは33か34インチでしょう。
パターの代用として、アイアンやウェッジはロフトが大きすぎるため選択肢から排除すると、残るはウッド系です。
キム・シウーのクラブセッティングにあるのは、1番、3番、5番です。
番手 | モデル | ロフト角 | ライ角 | 長さ |
---|---|---|---|---|
1番 | EPIC SPEED | 8.5° | 58° | 45.75″ |
3番 | MAVRIK SUBZERO | 15° | 55° | 43.25″ |
5番 | MAVRIK SUBZERO | 18° | 55.5° | 42.75″ |
ロフト角だけで考えると、最もロフトが立っている8.5°のドライバーが近いです。ただ、ドライバーはティーアップして使うクラブのため、フェース高があります。何より460ccというドデカヘッドですから、パターの代用としては使いづらいのが想像できます。
特に、キャロウェイのEPIC SPEEDは、EPIC 2021年モデルの中でもディープでハイバック形状です。ことさら、地面に直にあるボールを打つには適していません。
そうなると、残るは3番ウッドと5番ウッドです。フェアウェイウッドは地面にある球を打つクラブですから、芝との相性の良さがあります。
そして、ドライバーと違って球が上がるようにヘッドが薄く作られていますし、ヘッドサイズも1/3ぐらいに小さくなっています。
外観としては、かなりパターに近づきます。MAVRIKシリーズのフェアウェイウッドは、幸いにもロフト角・ライ角調整機能が搭載されていませんので、ネックがすっきりしていることもプラスに働きます。
後は3番、5番のどちらを選択するかです。改めてスペックを見比べてみましょう。
番手 | モデル | ロフト角 | ライ角 | 長さ |
---|---|---|---|---|
1番 | EPIC SPEED | 8.5° | 58° | 45.75″ |
3番 | MAVRIK SUBZERO | 15° | 55° | 43.25″ |
5番 | MAVRIK SUBZERO | 18° | 55.5° | 42.75″ |
ライ角はパターと比べると約15°の差がありますが、3番と5番ではほぼ同じです。あとは長さを取るかロフト角を取るかです。
クラブ長さは人の方で対応ができそうですが、ロフト角に対応するのはなかなか難しそうです。
特にパターのロフト角は殆どが3°で、ほぼ絶壁です。MAVRIK サブゼロフェアウェイウッドは3番が15°、5番が18°です。
5番を選べば、3番よりも0.5インチ短くなりますが、ロフトは3°寝てしまいます。
ボールをセットしてフェースを合わせた時の見え方を考えると、0.5インチの短さより3°フェースが立っている3番ウッドを選択する方が、よりパターに近い使い方・ストロークが出来そうに思います。
キム・シウーの行いについては、最高の舞台で世界中の人たちが見ていることを考えれば、適当ではないことは明らかでしょう。
その後の選択に関しては、3番ウッドを使ったことは、正しい選択であったと思われます。
